東京地方裁判所 昭和28年(ワ)2816号 判決
原告 中原茂敏
被告 日本化工株式会社 外四名
一、主 文
被告水埜文平は、被告日本化工株式会社の代表取締役でなく、被告菊池辰次、同早淵金一及び同萩原治房は、同会社の取締役でないことを確認する。
訴訟費用は被告等の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め、その請求原因として
「一、原告は、被告会社の株主であるところ、被告会社の昭和二十八年二月十四日の臨時株主総会において、被告水埜文平は代表取締役を、被告菊池辰次、同早淵金一、同萩原治房及び訴外片岡英一は取締役をそれぞれ辞任し、新に原告、被告水埜文平、訴外葉梨新五郎、同堀立身、同石田芳郎、同石井大助、同大橋薫及び同片岡英一が取締役に選任され、直ちにその就任を承諾し、引き続き同日取締役会において、原告が代表取締役に選任されてその就任を承諾した。
二、被告水埜は同人、被告菊池、同早淵及び同萩原の前記各辞任の届書の引渡をしないので、原告はその代表取締役及びその他の取締役等の選任登記手続をすることができず、而も同被告等は、右取締役等の改選後も依然として代表取締役又は取締役の職務を行つている。
よつて、原告は、株主たる地位にもとずき、被告水埜が代表取締役でなく、被告菊池、同早淵及び同萩原がいずれも取締役でないことの確認を求めるため本訴に及んだ。」
と述べた。
被告訴訟代理人は、原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として、「原告主張の一、の事実は争わないが、二、の事実中辞任届を保留して引き渡さないとの点を否認し、被告菊池、早淵及び萩原の取締役としての職務執行の事実を認める。被告会社については昭和二十八年四月八日被告水埜文平の代表取締役としての職務の執行が停止され、代表取締役職務代行者が選任されたので被告水埜はもはや代表取締役の職務を執行していない。而して代表取締役の職務代行者が選任されている限り代表取締役等選任の登記は許されないから本訴において原告勝訴の判決があつても、原告の右地位に関する法律上の安定を得られず、本訴は確認の利益を欠くこととなり、失当である。」と述べた。
三、理 由
原告主張の一の事実は全部被告等において争わないから、本訴の争点は確認の利益の存否の一点につきる。
さて、本訴につき、仮処分として、被告水埜文平の代表取締役としての職務の執行を停止し、代表取締役の職務を代つて行う者として訴外弁護士金原藤一が選任されたことは当裁判所に顕著な事項であるが、仮処分によつて形成されているこの法律関係は仮のものにすぎないから、この法律関係に立つて本訴の実体上の理由の存否を判断することは許されない。したがつて、この点に係る被告等の主張は到底認容するをえない。しかして被告水埜文平が右仮処分のあるまで代表取締役としての職務の執行をなし、被告菊池辰次、同早淵金一及び同萩原治房が現に取締役としての職務の執行をしていることは被告の認めるところである。果して然らば、被告会社の業務の執行の決定機関たる取締役会を構成する取締役の地位及び被告会社の対外的業務執行機関たる代表取締役の地位の存否を被告等について確定するにつき原告は株主として当然法律上の利益があるといことができるのである。
よつて、原告の請求を正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条の規定を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 小川善吉 畔上英治 岡田辰雄)